大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)1029号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人難波貞夫、同穂積荘蔵の上告理由第一点、第二点について。

記録によれば、被上告人は、昭和四〇年八月二四日付附帯控訴の趣旨および理由訂正申立書(同日受付、記録七四四丁)に基づく附帯控訴の趣旨に変更する旨申し述べたのに対し、上告人側は原審第二九回口頭弁論期日において右変更に同意していることが認められる(記録八四三丁)。それ故、原判決が所論のように判示したのは、何ら違法ではない。論旨は採るを得ない。

同第三点について。

借地権ないし仮換地上に借地権と同等の権利(使用収益権)の不存在の確認請求訴訟においては、そのような権利の存する旨を主張する者においてその要件事実の主張、立証を要するものと解されるところ、原判決は上告人らにおいてこのような要件事実の主張、立証をするところがない旨を判断しているのであるから、原判決には何ら所論のような違法は認められない。所論は採るを得ない。

同第四点について。

従前の土地の一部について賃借権を有していても、土地区画整理事業の施行者から土地区画整理法九八条一項所定の権利の目的となるべき土地としての指定通知を受けない限り、当然には仮換地について現実に使用収益をすることができないことは、当裁判所の判例(昭和四〇年三月一〇日大法廷判決、民集一九巻二号三九七頁。なお、同四〇年七月二三日第二小法廷判決、民集一九巻五号一二九二頁参照。)とするところであるが、原判決の判文によると、上告人らは本件従前の土地に対する賃借権が未登記であり、しかも、土地区画整理事業の施行者神戸市長から同法九八条一項所定の権利目的となるべき土地としての指定通知を受けていないというのであるから、仮りに上告人らが従前の土地について賃借権を有していたとしても、本件仮換地について上告人ら主張のような特定の賃借権と同等の権利を有することは認められないといわねばならない。そして、このことは、原判決の判示するように、本件仮換地指定処分の従前の仮換地に関して、神戸市長からの原判示の指定通知によつて解体移転された場合においても結論を異にするものではない。この点に関する原判決判示は正当であり、原判決が論旨の指摘する事実について所論のような判断をしなかつたからといつて、原判決は何ら違法ではない。所論は原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難し、または原審の判示に副わない事実関係を主張し、これを前提として原判決の違法をいうものであつて、採るを得ない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例